藤井風は地上に舞い降りた音楽の天使【武道館ライブレポ(2nd)】
換気タイム終了です。ブログでも換気をしていきましょう。
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15分間の換気タイムを終え、第二部開始。打って変わって藤井風一人からバンドメンバーも加えられた四人編成のステージになり迫力が増した。バンドサウンドによる藤井風の楽曲を生で聴けるなんてそんなこと…と拝みつつ7曲め。
「何なんw」
きました『HELP EVER HURT NEVER』アルバム一曲め、記念すべきデビューシングル。バンド映えする曲だとは想像はしていたけれど、バンド生演奏での「何なんw」凄すぎる。イントロが重厚感を増してハレハレ…が身体を突き抜けてくる。ハレハレ…に殺られる…。
演奏が始まると藤井風が『立ってもええでー!』と観客に投げかける。
みな周りを見渡して恐る恐る椅子から腰を離して続々と立ち始めると、疼いていたものを放出するように感じたままに踊り始めた。
(…これじゃ…ワシが見たかった光景はこれじゃ…)
と藤井風の気持ちになって感動していると、誰一人として声を出していないのに、大合唱で埋め尽くされているような不思議な錯覚に陥った。そう、あの瞬間、会場内は確かに何なんwグルーヴが発生していたのだ。大サビのスキャット「裏切りのブルース バラベレンベベレベレンベベレンババランバ」も約7000人分聞こえた。聞こえました。ハァ…もう鎮まりたまへ…我がハイヤーセルフよ……。
一部のラフスタイルから着替えて二部では上下ストライプのセットアップスタイルになった藤井風。ピアノから離れてステージで縦横無尽に全身で音楽を表現している姿は本当に楽しそうだった。
会場のボルテージを初っ端で爆上げして観客も緊張が解けたのかマスクをしていることも忘れたかのように踊り、ライブらしくなってきた8曲め。
「もうええわ」
「何なんw」の次は「もうええわ」。「もうええわ」の前は「何なんw」。この単語の繋ぎは国で定められています。
アルバム曲順で披露された2ndシングル。
イントロの演奏から青い照明に照らされてMVで幾度と見た表情で歌う藤井風。MV撮影地の渋谷の情景が浮かぶように気を抜いたら「もうええわ」の世界観に飲み込まれそうになる。こんなにも『アハハ…』を憂いや望みや開放感が入り混じった表情を表現できる人間がこの世に何人いるだろうか。
藤井風の突き抜けた表現力に圧倒されながら演奏が終了する。
ここで藤井風が「改めましてこんばんは、みなさん。」と二部の挨拶をする。ここから先は素晴らしいバンドメンバーを加えてパフォーマンスをしていくことを観客に告げて9曲めに入る。
「優しさ」
優しさだ(悟り)
『人に優しく出来ていないのに人に優しくされて、自分が恥ずかしくなった』と「優しさ」の解説動画でも触れていたエピソードを語り、木陰や影をイメージしているような暗いトーンの照明に照らされて歌い始める藤井風。
“優しさ”は藤井風の音楽テーマの一つであると思うし、精神的支柱であるとも思っている。毅然とした振る舞いで大サビの「優しさでよかった ただそれだけで」とこの時世に於ける“優しさ”を上空に叫んでいるように思えて胸が熱くなった。同時に、優しさは強くてかっこいいと再認識した。優しさは強くてクソかっこいいんだ。
アルバム曲の3曲を順に終えて、ここからライブの毛色の異なる演出が展開される。
折り返しの10曲め。
「キリがないから」
ブラックボックスのモニターが、さながら映画マトリックスのような黒と蛍光緑のデジタルな色合いになり、「キリがないから」の近未来的なイントロはデジタル映像と呼応するかのように駆け抜けて会場内がマトリックスに誘われる。山田健人監督はMVの世界観を見事に再現したのだ。恐ろしかったのが武道館公演を決めておそらく3ヶ月足らずで構想を練り上げてこのクオリティーを形にしているということだ。
演出の凄さに釘付けになっていると藤井風の隣にアンドロイドが現れた。
今、ここどこ!?!?!?!?!?
わからない。僕は知らぬ間に四次元空間に誘われたのかもしれない。ここまで凝ったライブの演出は初めてだ。それ程までに曲の世界観と融合し、クオリティが常軌を逸している。正直「キリがないから」に関しては演出に魅入ってしまった。アンドロイドと同じロボットダンスの動きをしていた藤井風がいた気がする。アンドロイドのヒロム氏を藤井風が丁寧に紹介していた気もする。もう僕は世界に入り込んでいたから全部「気がする」。でも確かにあの時よぉ!確かに…!もうこの話はキリがないから…。
流れるように11曲め。
「罪の香り」
ダダダダダダダダダダダダダダダンッ!×4
(ポンポンポンポンポンポンポンポン×∞)
「罪の香り」の特徴的なイントロが会場内に響き渡る。シッ…静かに。耳を澄ましてください。よく聴くと罪の中に木魚がいるんです。これね、罪木魚。かわいいね。は?
照明はアダルトな色合いを断続的に照らして藤井風を演出する。揺めきながら伸び伸びとセクシーに歌い上げているのが印象的だった。アダルトアダルトさんの再来である。
演奏が終わると、ハーフMCが入る。皆さん元気にしてますか?から入り、『ちゃんと奥まで見えてますよ、今日コンタクト入れてきたんで』と一通り客席を見渡す。
この頃には、もう完全に武道館に慣れた様子の藤井風が見受けられた。
このままMCの流れで12曲め。
「調子のっちゃって」
気怠くもクラシカルなイントロが胸を疼かせる。初めてアルバムを通しで聴いた時に、確か一番衝撃を受けた曲。インスパイア元、ゆりやんレトリィバァのネタからこの次元の作品を産み出す凄さにも驚いた記憶がある。
体の動きを歌詞の内容に合わせて、自由に、まるで裸の王様のように表現する藤井風。
Cメロの「もう二度と犯さない 恥ずかしい勘違い」「当たり前なんてない 自分のモンなんてない」の怒涛の同音コンボの後の大サビ前「ちょっと待ったってええぇぇええ!」が大好きで、それを武道館の音響で浴びられただけで感無量だった。
もう周りのことを気にしてなかったけれど、ふと周りを見ると観客は何でもかんでもみんなおどりを踊っていた。藤井風によってポンポコリンにされているのにも気付かずに…。
終わりが見えてきた13曲め。
「死ぬのがいいわ」
ピアノソロで始まり、卓越した演奏テクニックと繋ぎで本曲に入る。
藤井風は歌手である前にピアニストでもあるんだと再認識をした瞬間だった。
繰り返されるイントロフレーズ。演奏は冷静と情熱の間を行き来して彷徨い、魅了する。照明は感情を左右するかのように藤井風を照らし、ムードを極限まで引き立てて、妖艶な雰囲気のなかで歌う藤井風。歌詞の連続押韻「Monday」「Sunday」「だれ」がベースばりに低音域すぎて藤井風でさえも声を出し辛くしていて(そこ難しいよね)って急に心の距離縮まった。いやお前だれ?
「死ぬのがいいわ」の演奏が終わり、ここで会場内に異変が起きる。
暗闇の中で突然足音が聞こえてきて、モニターには波の映像が映し出される。静観していると「主演・藤井風」「へでもねーよ」の文字が浮かび上がる。映画が始まったのか?と思ったらモニターは表情を変えて幕を開ける。
「へでもねーよ」 新曲
へ?何が始まった?と言わんばかりの会場内の騒然とした空気は今でも思い出せる。何一つ導線なく、モニターに海バーン!波ドーン!主演・藤井風!へでもねーよ!おどれおどれおどれ!と歌い始める藤井風。立ち尽くすしかないでしょうが。
だ、誰のカバー…?と思いながら歌詞をなんとか聴き取って、岡山弁で歌詞が構成されていることに気づき、新曲………新曲だ……!とやっと藤井風のサプライズ新曲ということに気づく。
これからの時代、岡山弁聴き取り能力検定、KAZEICが必須になってきます。
あの……それにしてもさぁ………
引き出しの数、千と千尋の神隠しの釜爺か?
いや誰が暴れん坊将軍のテーマみたいなイントロ流れて、あ、藤井風の新曲だ!ってなるんだ。馬に乗って出てきたほうがまだ説得力あるよ。それにしてもこの曲。サウンドが歌詞に沿ってアグレッシブな骨太ロックから悟りを開いて天に召されるようなオーケストラ調の全く正反対なものに曲の中で転調するんだよ。凄すぎない…?そして一度聴いただけで中毒性凄すぎない…?
開演前のアナウンスにあった『ゴリゴリにイキった曲、みんなが歌ってくれる曲を作りたい。次のアルバムは1stアルバムより若々しいアルバムにしたい』という言葉がそのまま曲に表れているようだった。また、歌詞から様々な心情を感じ取られてなんだか嬉しくなった。
イキリ風さん、自分、パン買ってきます!
藤井風の振り幅に眩暈をしているとまさかの新曲2曲めを披露。
「青春病」新曲
一曲目の「へでもねーよ」とまたテイストの異なるシティポップなナンバー。あんちゃんどれだけ新しい音楽を生み出すの…。もう進撃の音人(おんじん)の始祖じゃん…。
やや緊張した面持ちでスタンドマイクで新曲を披露する藤井風。印象的だったのは歌に時折入れていたMJチックなブレス音。「青春はどどめ色」という藤井風の世界観丸出しのフレーズ。「ちょっと進んで またちょっと進んでは」の歌詞に合わせて歩く時の腕振りのような振り付けをしていた藤井風を見て、観客側も身体が勝手に動いてしまっていて、藤井風自身が音楽を本当に楽しんでいるから聴き手も本当に楽しんでしまうのだろうなぁ…と五臓六腑に染み入っていく音を感じて思った。
世に初めて新曲が放たれた瞬間に立ち会えて、至高の演奏と演出のなかで、もういい…もうええわ…ずっと聴きたかった音楽を聴くことができて、いますごく幸せなんだよ…。カゼラッシュ…もう天にでもどこでも連れてってくれカゼラッシュ…。と放心状態になっていると終わりを告げる例のナンバー。
「さよならべいべ」
終わる…。この曲と“あの曲”でもう終わるんだと思うと寂しさと安堵が同居する妙な気持ちになる。新曲を初披露して緊張が解けたのだろう、藤井風も伸び伸びと安心した表情で歌っていた気がした。「さよならがあんたに捧ぐ愛の言葉」のサビで手を振り、観客も負けじと大きく手を振り、会場中に手を振るムーブが起こる。勿論僕も満面の笑みで手を振る。
とてもライブ映えする曲だなあと感心していると演奏が終了し、おそらく本公演最後のMCが始まる。
お礼の言葉から始まり、バンドメンバーと「キリがないから」でアンドロイドを演じたヒロム氏の紹介、本公演を支えたスタッフの紹介をして、最後に『あなた自身にも拍手してもらってもいいですか!』と自分自身に拍手をするようお願いする。初めての経験だった。愛と平和の化身かよ…。
『これからも人生は続くと思うんですけど、(今日のライブで)ポジティブでハッピーな気持ちになってたら嬉しいです。』
『…ワシは今でももがきよるし。新曲でも全然まだもがいてる様子を歌っているんですけど…。これからも、もがき続けると思いますけど、みなさんと一緒に楽しく人生をもがいて生きていきたいなと思ってます。これからもよろしくお願いします。』
この言葉を聴いて、藤井風も僕たちと同じ人間なんだと心から安心をした。誰しもが大なり小なり人生をもがいて生きている。そこに優劣なんてないし、もがいた先になんだ人生って意外と楽しいじゃん。って思えれば無問題なんだよね。その繰り返し。その繰り返しに藤井風が共にいてくれる心強さよ。
そして、本当のラストナンバー。会場内は早くもすすり泣く声が聞こえる。
『じゃあ幸せな気持ちで帰ってもらうために』
と告げられ、この武道館ライブの集大成、現在の藤井風の集大成、『この曲を発表するまでは死ねない』と言わしめた曲の演奏が始まる。
「帰ろう」
イントロの鍵盤一音目で魂が震える感覚を覚えて、自然と涙が出てくる。スポットライトで藤井風を照らしていた照明は歌詞を追うように暗闇から光がさして、少しづつステージが拓けていく。藤井風から発せられる音を一音も漏らすまいと全身全霊で受け止めて、改めてこの先数年は「帰ろう」以上の曲には出会えないだろう、と観念をした。
2番に入り、いよいよこの奇跡が終わってしまうと思い悔いのないように瞬きをせずにいると、「ああ全て与えて帰ろう」のサビの瞬間に合わせて天井から白い羽根が舞い降りてくる。見間違えかと思ったが、確かに白い羽根が武道館に存在していた。
降り注ぐ光のもとに白い羽根がキラキラと舞い降りていくその光景はあまりにも美しく幻想的で、時が止まったようだった。
舞い降りる白い羽根はステージに、中央のグランドピアノにひらりひらりと次々に落ちていき、遂には演奏をしている藤井風のパーマ髪にも落ちて張り付く。
張り付いた羽根は演奏の動きで落ちるかと思いきやそのまま張り付いたままになり、
その瞬間
え………………………………………………?
天使………………………………………………?
天使みた。
まごう事なき天使見た。本当に見ました。
頭に羽根が張り付いたまま「ああ 今日からどう生きてこう」と歌い上げ美しい旋律を終える藤井風。
感動したの一言では片付けられない体験をしてしまったと思った。一生脳裏に焼き付いて忘れられない、大切なシーンに遭遇したとも思った。
鳴り止まない拍手。マスクのなかに出来た涙の琵琶湖。
僕たちに与えられた演者への喝采の手段は拍手のみだ。ビチャビチャのマスク越しに声を届けたい想いを全身全霊に手の平に込める。
東西南北の観客に深くお辞儀をして、「帰ろう」のMVで最後に藤井風が還っていく際に見せたような笑顔で大きく手を振る。ブラックボックスが頭上から降りてきて藤井風の姿を覆うように包み込み公演が終了する。
しばらく立ち尽くしていると、ブラックボックスのモニターに白文字で藤井風の直筆で書かれた英語の感謝メッセージが映し出される。
2020.10.29 (木)Fujii Kaze "NAN-NAN SHOW 2020 " HELP EVER HURT NEVER@日本武道館
【2nd ステージ】
フルバンド
07.何なんw
08.もうええわ
09.優しさ
10.キリがないから
11.罪の香り
12.調子のっちゃって
13.死ぬのがいいわ
14.へでもねーよ(新曲)
15.青春病(新曲)
16.さよならべいべ
17.帰ろう
終わった。
ライブレポについてはここまで文字数を気にせず蛇足に蛇足を重ねて心情を吐露したのでもう出し尽くした。だからもう話すことない。
それよりも何よりもこの武道館ライブで希望の瞬間に立ち会えたと思ったんだ。ここで言う希望は抽象的ではない、目に見える具体的な希望だ。
今回の武道館公演に懸ける想いは報道ステーションで放送された特集をみて、ある程度解っているつもりだった。でも、実際に現地の空気や温度を体感して、自分の想像なんて遥かに超えていたことを知る。
この状況下で公演することを選んだ意味。
舞台の演出・制作・音響・整理を担う運営陣の底知れぬ苦労・葛藤。それだけでも重圧は計り知れないのに生配信も行う情熱と信念。
携わる全ての人々の想いが具現化して形になったのが今回の武道館公演だったと言える。これらがすべて愛で成り立っていると思うと愛の偉大さを信じざるを得なかった。
藤井風は愛の人だ。愛は呼応するように愛を集めて膨大していく。
『HEHN RECORDS』という自社レーベルでなければ、心の底から藤井風の音楽を世界に届けたいという使命と愛を持って行動している人達でなければ、この奇跡的なライブは実現せず、更に言えば何にも染まらない純粋無垢な藤井風の精神から作られる音楽はこの世に生まれていなかったと思う。
武道館ライブの初めのMCは英語で始まった。藤井風、およびHEHN RECORDSが目指す先はコスモポリタンであると考える。
音楽で世界を変えるなんて言葉は理想主義で自惚れたアーティストの戯言だろうか。もちろん“世界を変える”なんて言葉は藤井風は言っていないし、今後も言うことはないだろうと思っている。
でも、藤井風の音楽は世界ではなく、個人の心を救うことができる。身体中を温かい光に満ち溢れさせることができる。明日の行き先を問うて導くことができる。
結果として、自分の見える世界が変わる。その変わった世界を藤井風は共に見てくれているのではないだろうか。それも、崇高な所からではなく同じ目線で、寄り添うように。
正直な話、これ以上世に知られてしまうとライブのチケットが取れなくなる懸念から周知されてほしくない感情は絶えずあるけど、それ以上に藤井風は世に知られなくてはならない存在だと心の底から思っている。
思っているので最後に藤井風のツアー『Fujii Kaze“HELP EVER HALL TOUR”』がこれから公演されることを宣伝します。
オンライン配信も素晴らしいと思うけれど、現地で藤井風のライブを体感してどうか人生のお守りにしてほしい。もうすでに倍率凄まじいと思うけど、この宣伝によってさらに倍率上がってチケット取れなくても全然気にしない。憎み合いの果てに何が生まれるの…。
そして藤井風の公式アプリもリリースされました。ここで藤井風の最新情報やソウルメイト・マネージャーカワズ氏による限定情報をチェケラしよう!僕はだれ?
これで本当の本当に最後。『HELP EVER HURT NEVER』を未聴の人は聴きましょう。バレバレのサブリミナル効果で藤井風の目を閉じた顔(アルバムジャケット)を何回このブログに登場させたと思っているんだ。
そして新曲の『青春病』『へでもねーよ』も聴きましょう。
そしてピアノ弾けないのに買ったピアノスコア。もう藤井風の目を閉じた顔(アルバムジャケット)の祭壇ができる。
もう何も言うことはない。本当にない。
いや、一番肝心なこと言い忘れてた。
武道館ライブDVDを出してください。
THX... BRO... YEAH...(追記:2021/04/21)
お前はHELP EVER HURT NEVERから何学んだんだ?執着を捨てろ!とハイヤーセルフが言っている気がするけど、それとこれとは話は別だから…。ちょっと静かにして…。
言うとりますけど(more...more...more...more...more...more...)
あぁ………………………………。
今日からどう生きてこう…………………。